二十三歳
夜中。私はコンビニに走る。菓子パン、スナック、ケーキ、アイス。とにかく目にしたものを手当たり次第にカゴに入れた。
「レシートいらないです」
店員とは目を一切合わせずコンビニをあとにする。パンパンに膨らんだビニール袋を両手に持ち、足早に家に向かった。
急いで自分の部屋に入り一気に口に放り込む。数分後、大量にあったはずの食べ物はいつの間にかなくなっていた。
「もうないの? どうしよう……」
不安でたまらなくなり、私は財布を抱えてまたコンビニへと走った。
数カ月前、私は会社を辞めた。女性の上司との相性がめっぽう悪く、いつも怒られていた。
「いつもヘラヘラして」
「すみません……」
そんな毎日。でもそれが理由で辞めるのも悔しいから、しばらくは歯を食いしばっていた。けれど怒られ続けると何が正しいのかのわからなくなる。ある日、私はデスクで過呼吸になった。
「今日はもういいから帰って。本当に弱いんだから」
あきれ顔の上司が私にそう言い放った。その日を境に私は仕事に行かなくなり、そして部屋に引きこもった。
「少し調べたんだけど、精神科に行ってみたら?」
ドア越しに母の声が聴こえた。私は黙ってテレビを見続ける。精神科って何それ。仕事はしてないけどちょっと疲れただけだよ。私は大丈夫。そう心の中で返事をした。
家族が寝静まる頃、今日も私はコンビニに向かう。菓子パン、スナック、ケーキ、アイス・・、昨日と同じように次々と買いものカゴに入れていく。
外が騒がしくてふと窓に目をやった。
「これ誰?」
顔も体もパンパンに膨れあがった、私ではないような私が窓に映っていた。髪はぼさぼさで肌はボロボロ、目もうつろで濁っている。
「確かに正常じゃないな、これは」
私は買いものカゴをその場に置き、コンビニをあとにした。
私の次の記憶へ
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