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七歳


「あなたはお姉ちゃんの生まれ変わりだから」

 そう言われ続けて育った。

 二番目の姉は生まれてすぐに難病だとわかり、たくさん検査をしては手術や投薬を繰り返した。とても大きな痛みを伴う病。泣き続ける姉に付き添う母は、その姿を心が張り裂けそうな思いで見ていたという。

 治療むなしく姉は生まれて一年で亡くなる。

 その二年後に私が生まれた。

 母は亡くなった姉に強い心残りがあったようで、姉にしたかったこと、姉にしてもらいたかったことを次々と私に要求した。ピアノ、書道、バレエ、絵画。日を追うごとに習い事が増える。

「何やってるの」

「だって……」

 少しでも母の思い通りにならなければ頬を叩かれた。私は意思のない、ただひたすら母にコントロールされるロボットのような存在。あくまで母は姉の生まれ変わりとしか見ていないから、私の意思なんてこれっぽっちも必要じゃなかった。

「きっとこの家の子ではないんだ」

 いつしかそう思うようになっていた。というか、そう思うことで私はこの日常をどうにかやり過ごそうとしていた。なのに、次第にそのモヤモヤした気持ちが抑えられなくなり母にこうたずねた。

「ねえ、私は誰の子なの?」

「決まってるじゃない、私の子よ。でも、あなたはお姉ちゃんの生まれ変わりだからしっかりしなくちゃね」

「そっか……。そうだよね。うん、頑張るね」

 母が望むであろう返答をしながら、私は私ではなく姉の人生を生きているのだと絶望した。

「将来の夢を書いてください」

 学校で課題が出された。意思なんて必要とされない私は、そんなことなど考えたこともなかった。渡された原稿用紙を前に夢を考える。

「……何て書くんだろう」

 私は姉を一生懸命に想像した。顔も見たこともなく声も聞いたことのない、その姿を。






私の次の記憶へ

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