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十九歳

 
 サークルに入って、夏は川でバーベキューして冬はスノボー。

 大学受験を前に僕は妄想していた。一応、進学校。まわりと同じように何の疑問も持たずに受験勉強を始めた。

「あの大学ってオシャレそうだからいいよな」

「俺もそこ狙ってるんだよね」

 三年間同じクラスの上坂と、いかに大学生活をエンジョイできるかについて話し合う。少し面倒くさい部分もあるけど上坂は気の合ういいやつだった。

 浮ついた気持ちのままいよいよ受験シーズンが到来した。結果むなしく、僕はどの大学にも受からなかった。憧れのキャンパスライフが遠のく。気が乗らないけど自動的に僕は浪人を決めた。春、近所の予備校に行くと上坂がいた。

「四年目もよろしくな」

「よろしく、じゃねえよ」

 また上坂とのくだらない生活が始まった。僕たちは、授業はそこそこにして街へと繰り出し、ファミレスや映画館、たまにゲームセンターで時間を潰した。

 ところが夏のある日から杉山はぱったりと予備校に来なくなった。それでも僕は相変わらず授業にはほとんど出ず、ダラダラと過ごしていた。でもやっぱりつるむ相手がいないと楽しくない。僕はしびれを切らして上坂に電話をした。

「お前、最近どうしたの?」

「ごめん、ごめん。俺、大学行くのやめるわ。美容師になろうと思って」

「はっ、何言ってんの? 大学は?」

「行かないことにした。お前は勉強頑張れよ」

 冷静に話す上坂の口調に、本気なんだと感じた。電話を切り、僕はしばらくその場に立ち尽くす。当たり前に大学に行くことだけを考えていた僕に、上坂から「お前は何がしたいの?」と突きつけられた気分だった。

 なんだか家に帰る気にもなれない。僕はファミレスに寄って、新品同様のノートに片っ端からやりたいことを書いた。医者、芸能人、チェスの選手、F1レーサー、意外とサラリーマン……小学生が書くような夢しか思いつかなかい。ふと楽しそうに髪を切る上坂の姿が目に浮かんだ。なんであいつは「これだ」って決められたのかな。

 数時間後、テーブルには数十個の夢が並んだ。

「運命の分かれ道」

 僕はノートにふわっと浮かびあがる一つの職業に丸を付けた。







僕の次の記憶へ

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