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十一歳


「今週のジャンプ読んだ?」

 いつも教室では漫画やゲームの話になるけれど、僕はそれに全く興味を示さなかった。

「昨日、地球温暖化の特集やってたよね。あれ、すごくマズいと思って……」

「何それ」

 話を振っても共感されることもなく、すぐにまた別の話題になってしまった。

 最初は単なる昆虫好きな子どもだった。休み時間や放課後になると虫を探して、家でもカブトムシやカマキリ、蝶々などいろんな昆虫を飼っていた。

 ある雨の日、道路でカエルを見つけた。ぴょんぴょんと跳ねる姿が面白くて一緒に飛び跳ねてみる。「あっ」。突然車が現れ、目の前でカエルをひいた。跡形もなくぐちゃぐちゃになるカエル。そのとき僕は人間は悪だと思った。いなくなればいいとも思った。僕はさっきまでカエルだった物体をすくい上げ、近くの木の下に埋めた。

 それは小学生の僕にとってものすごく脳裏に焼き付く出来事であり、それがきっかけで僕は昆虫の身の回りにある自然や環境に興味を持ち始め、一層、それを破壊し続ける人間が嫌いになった。

「人間は悪者なの?」

 放課後、担任の先生にそう聞いたことがある。けれど「うーん、悪者か。悪い人もいるけど、お前はそういう人間になっちゃダメだぞ」と、少し検討違いの言葉が返ってきた。

「先生、人間がいなかったら動物も虫も、植物だってもっと生きやすいと思う。だから人間なんていらないって思うけど、僕も人間だからどうしたらいいのかわからなくて」

 ずっと抱えていた悩みだった。先生は「そっか、それはつらいよな」と僕に同情をしてくれたようで、日が暮れるまで話を聞いてくれた。

 でも、先生はもっともな答えを最後まで言ってはくれなかった。

「あのテレビ面白かったよな」

「うんうん」

 また教室でいつもの会話が始まる。前と違うことは僕がその輪に入っていることだ。先生にも解決できなかったから、僕はもうあのことは考えないことにした。







僕の次の記憶へ

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