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十歳


 いつも姉と比べられた。できのいい姉とそうでない私。小学生の私は常にそのコンプレックスを抱えていた。

「あなたが悪いのよ」

 たいてい、きょうだい喧嘩になると「お兄ちゃんなのに」とか「お姉ちゃんでしょ」と歳上が叱られるはずなのに、私と姉のいざこざはいつも私のせいにされた。なんで私だけ……。とはいえ姉が異常に優れていただけであって、私も幼い頃から一通りの塾や習い事をさせられ成績は悪くはなかった。学校の授業は塾で教わった内容ばかりでつまらなくほとんど寝ていたくらいだ。

「おい、寝るな。これ解いてみろ」

「あ、はい」

 私は即座に黒板に正しい回答を書く。

「まあ、正解だけど、ちゃんと話を聞けよ」

 先生は決まりが悪い表情になった。

 姉ほどではないけど私もまわりよりできるんだろうな。無意識にその感情が芽生え、知らず知らずのうちに同級生を見下していた。おそらく先生でさえも。

 ただ、そういう態度はかんに障る。次第に遊び相手がいなくなり私は仲間はずれにされた。

 最初は強がっていたけれど話し相手がいないのはさすがにつらい。私は勇気を振り絞って母に相談した。

「あなたね、いじめられる方にも問題があるのよ」

 優しい言葉をかけてもらいたかったのに、なぐさめてほしかったのに、母はどうしてそんなに私に冷たいのか。心の奥がキュッと締め付けられる。私はその場はなんとかこらえて自分の部屋でわんわん泣いた。

「ちょっと、いつまで泣いてんのよ。なんでみんなに嫌われるか考えてみたら」

 ドア越しにため息交じりの声が聞こえた。やっぱり姉はいつも冷静で、だからこそちょっとムカつく。でも、不思議なことにその言葉は私をホッとさせた。

 泣きやんだ私はこれまでの自分を見つめてみる。

 まわりをこれっぽっちも気に掛けない私が、そこにいた。

「それは、いじめられるよな」

 泣き疲れた自分の顔が鏡に映った。

「明日、みんなに謝れるかな」

 少し不安になりながらも赤くなった鼻を見て思わず笑ってしまった。







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